Find A or B

世の中にたくさんある問題を自分で調査し解決策を見つける。AなのかBなのかはっきりさせるという意味を込めて Find A or Bというブログタイトルにしました。

ぼくたちの年金の将来像

年金制度改革の必要性や消えた年金問題など、働き始めてからテレビ、インターネットで年金に関する問題は耳にしてきた。そんな情報に反応してなのか、どうせ保険料を納付しても年金はもらえない。との投げやりな友人も周りにはいた。しかし、いずれも断片的な情報でいまいち年金の問題の全体像はつかめない。そんな全体像をつかんでみようと、ぼくが感じていた疑問を出発点に公的年金の財政状況、給付額の国際的な位置づけなどを調査し、個人が準備できることに焦点をあててまとめてみた。

年金に関して感じていた疑問は以下の3つ。

疑問:

  • このまま公的年金保険料を払い続けると、退職後にいくらもらえるのだろうか
  • その金額で自分が思い描く豊かな老後はおくれるのだろうか。
  • 退職後にそなえて今から準備をしなければいけないことは何だろうか?

 

厚生労働省OECDなど公的機関の資料や統計を調べて分かった結論は以下のとおり。

結論:

退職後の公的年金による収入だけではゆとりある老後の生活はできない。働き盛りである今のうちから退職後の労働、資産運用による年金以外の収入源の確保の準備をし、時間、お金にゆとりを持ったバランスの取れた老後を目指すべきである。

 

なんか、当たり前の結論にはなってしまったが、要は自分の老後は自分で確保しなければならないということ。今から逆算して計画を立て、老後のお金、人間関係、趣味などを準備する必要がある。それではこの結論について年金財政、給付の現状についてデータを見ながら考えていきたい。

 公的年金の収入は04年の年金制度改革以降、保険料率アップ、国庫負担を増やしたため上昇傾向にある。一方で支出は単調増加を続けており、支出は毎年約0.5兆円ずつ増えている。縦軸の単位がわかりにくいが、グラフの数字に100億円を掛けるので数十兆円規模である。

 

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年金の収入を項目別に詳しく見てみよう。収入は保険料、国庫負担、運用が3本柱であり、全体収入の8割強を占める。運用収入は年によってバラツキが大きく、04年以降の年金制度改革では国民への負担を増やし、保険料収入と国庫負担を増やすことで支出を補っている状況である。

 

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収入と支出の差である、収支に目を移してみよう。97年から収支は急激に悪化し、保険料と運用収入が減少したため、単年度で赤字となる年も最近では見られ始めている。政府は04年の年金制度改革で保険料率の段階的な上昇と国庫負担率を従来の1/3から1/2に引上げた。国民負担を増やすことで収入を増やすためである。この改革以降は収支の悪化は食い止められたものの、単年度赤字の状況は根本的には改善されておらず、赤字の補填のため、積立金の額は徐々に減り始めている。昨年、積立金を運用するGPIFの運用成績が話題となったが、長期的にみると積立金の総額は減っているのが現状であり、年金財政の台所状況は厳しい。

 

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年金財政の安定化のため、増税や保険料の増額などでさらなる国民負担を求めることは可能なのだろうか。日本の国家予算における、社会保障関連支出の対GDP比を国際的に比較してみよう。日本の社会保障関連の対GDP比支出は23.1%とフランスの31.5%にはおよばないものの、1990年代からの高齢化の影響で支出が急激に増えている。04年度の年金制度改革では2017年以降の保険料は国民年金が16,900円、厚生年金の保険料率は18.30%で固定されることになっている。つまりこれから収入は増えづらい環境となる。一方で支出は増え続ける。さらなる国民負担を受け入れるのか?それとも年金の支給開始年齢を遅らせるなど支出を減らすのか?という選択を今迫られているのではなかろうか。

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しかし、そもそも ぼくたちが老後にもらえる年金額はどのくらいあるのだろうか。そしてその額は生活するのに十分な額なのだろうか。次のグラフはOECDに加盟している34ヵ国の所得代替率公的年金による給付で現役世代の収入の何割をカーバできているのかを示す指標)を示したが、われらが日本の所得代替率はおよそ50%とOECD34ヵ国中最下位の水準である。正直このグラフを初めて見たときはショックだった。

 

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下のグラフはOECD加盟34ヵ国に住む65歳以上の人たちの収入源割合を示している。日本の年金生活者は公的年金だけでは生活できないため、残りの収入を働いて生活費を稼いでいる現状が見えてくる。時間、お金にゆとりある老後は幻想で、生きるために働く。このような年金生活者の実態を表している。一方で公的年金による収入が日本と同水準にあるノルウェーデンマークは資産収入の割合が高く、労働による収入の割合が低い。つまり、自分たちは必要最小限働き、あとは不動産や株、債券などお金に働いてもらい収入を得ているということが分かる。

 

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退職後に働いて収入を稼げば生活できると自信のある人なら良いが、年齢による職種・職業の制限や体力の問題など十分な稼ぎが得られず、結果として貧困に陥る人たちも増えている。日本の65歳以上の相対的貧困率(現役世代の所得中央値の50%以下の割合)はOECDの調査によると、20%を超えており、5人に1人は貧困という問題を抱えている。必要最低限の生活すら困難となる年金生活者は確実に増え続けているといえるだろう。f:id:kenichiinaba:20170819130620j:plain

 

以上のような、年金財政と年金支給の現状を把握したうえでの私の提言は以下の3つ。

  • 時間、お金にゆとりのある生活をしたいのであれば、手持ちの資産を増やし、その資産の一定割合を運用することで老後の収入源を増やすべき。
  • 年金はもらえたとしても現役時の半分しか支給されない。老後も働くを念頭において、若者と比較しても優位性のある自分のできること、得意なスキルを身に着けつづけ、老後に備えるべき。
  • 年金以外の収入源が期待できないのであれば、海外、日本の地方など格安生活圏へ移動するなど徹底的に支出を減らす努力をすべし。